天上の音楽1

天上の音楽2

ピタゴラスは怒れる市民から暴行を受けていた。老齢の彼にとってその傷は致命的である。翌日、彼は数学や音楽に多くの偉業を後世に残して86年の生涯を終えた。

「天上の音楽」に真理を求めた彼の魂は救済されたのであろうか。

彼は徹底した秘密主義を貫き、得られた成果は教団の信者だけのものにした。彼の教えに反する者や秘密を漏らす信者には死の制裁を与えた。

増加する信者には全ての財産の寄進が義務付けられたため、彼の名声の高まりとともに教団は勢力を増していった。

しかし、教団が強大化するにつれて、ピタゴラスは政治にまで介入するようになったため、教団の秘術を求める市民や論敵の反感を買い、信者の多くは教会もろとも焼き殺され、教団は滅んだ。そのとき、貴重な研究成果の大半は失われた。

晩年まで絶大な力を誇示した彼も、最後は市民からリンチを受けて死亡した。生き残った信者の一部は生活のためピタゴラスや教団の研究成果と秘術を切り売りした。われわれが現在知りえる成果はほんの一部であるといわれている。

また、ピタゴラスの死後も、信者は秘かに研究を続け、彼らの活動はギリシャからローマ、オスマントルコ、中世ヨーロッパに広がった。

中世キリスト教の時代では彼らの秘密結社は悪魔主義のレッテルを貼られ、凄惨な弾圧を受けたため衰退していく。なお、教団のシンボルであった五芒星は悪魔の印とされ、黒魔術や占星術で用いられるようになった。

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