天上の音楽3
ピタゴラスはギリシャの黄金時代である紀元前582年、エーゲ海のサモス島に生まれた。同じころ、東洋では釈迦や孔子がその道を説いていた。
ピタゴラスは「不死の魂は有限で不浄な身体に閉じこめられており、身体が死ぬたびに魂は人や動物など別の身体へと移り、転生を繰り返している」とするオルフェウス教の信者であった。
オルフェウス教では「輪廻転生から逃れるためには、不浄な身体から魂の浄化をしなければならない」、「魂の救済は天上の真理を求めることで得られる」とされていた。オルフェウス教はインドのヒンズー思想の影響を受けていたのである。
彼はエジプトやバビロニアの留学を終えて40歳で帰国すると、「天上の真理を求めるには、天上の秩序を見出さなければならない。」と熱心に星や数の研究を始めた。研究にはエジプトやバビロニアで学んだ数学の知識が役立った。
留学中、万物の自然現象が一定の法則に支配されていること、その法則が数式により表せることを確信した。
帰国後、鍛冶屋の打つ金床の鎚が美しく響き合うのを聴いて、鎚の重さが6、8、9、12の簡単な整数比になっていることを発見した。
また、あるとき、美しい女性が奏でた音楽を聴いて魂がゆさぶられたピタゴラスは、音楽にこそ魂の浄化が潜んでいると考えるようになった。それ以後、音楽の根本である和音の研究するようになった。
当時、音の調律は演奏者が耳で聞いて行うだけであったが、ピタゴラスは楽器の弦の長さを半分にすると同じような質の音で聞こえることに気がつき、オクターブと音階を発見し、弦の長さの整数比によって、和音が奏でられることを発見したのである。
さらに研究が進めて、調和された音の「和音」を数学的に理解した。こうした関係は天上の至るところで成立すると考えるようになり、「天上の音楽を数学的に理解することで輪廻転生を断ち切ることができ、永遠の生命が得られる」と確信は強まった。
音楽の和音から、惑星の軌道にいたるまで万物の背後に「数の秩序」が潜んでいることに気づいたピタゴラスは「数」の美しさにますます陶酔して、「五芒星(ごぼうせい)」を象徴として数を崇める教団を設立した。教団では大勢の者が全ての財産を寄進し、世俗を絶って信者となり、天上の音楽を求めて数の研究するピタゴラスに従った。
ピタゴラス
紀元前582年 – 紀元前496年
ピュタゴラスの定理等で知られる、古代ギリシアの数学者、哲学者。プラトンにも大きな影響を与えた。
「サモスの賢人」、「クロトンの哲学者」とも呼ばれた。古代ギリシアのイタリア植民地の生まれ。
『アテナイの学堂』に描かれたピタゴラスは、物事の根源、即ち「アルケーは数である」と考えた。例えば、男は2、女は3、結婚が6(=2×3)といった具合にである(数秘学の項を参照)。ピュタゴラス学派、ピュタゴラス教団と呼ばれる独自の哲学学派は、哲学界に於ける様々な定理を見出した。
有名なピュタゴラスの定理も、実は本人によるものではなく、この学派によるものである。
この学派は五芒星をシンボルマークとしていた。
サンスカラーの法理