バッハは作曲年代後期にコラール編曲の連作のため「クラヴィーア練習曲集第三部」を作っている。
コラールはルター派教会で歌われた賛美歌であり、メロディーは単純だから歌うのが容易である。コラールは元来、礼拝においてア・カペラで歌われたが、バッハにより旋律に和声がつけられ複数のパートで歌うことができるようになった。
バッハはソプラノ、アルト、テノール、およびバスから成る聖歌隊に多くのコラールを編曲し、カンタータに合唱として使った。コラールはバッハの代名詞になっている。
「クラヴィーア練習曲集第三部」は、その大がかりなコラール編曲であり、バッハの作曲年代後期における、「オルガン小曲集」と対極をなす。
コーラルは「オルガン・ミサ」の様式により、ルターの教理間答のごとく編曲され、信仰の立場が表明されている。その傑作に「深き淵より、われ汝に呼ばわる」多声楽曲である。
これは六声部楽曲からなり、比較を絶するような表現力をもって「罪の告白とざんげ」を表現している。また、複雑なリズムと音程によって、バッハ自身の悩みと祈りを表した、「天にましますわれらの父よ」がある。
バッハは、聖書の福音書の記事を、迫力のある強い調子で描写しようとつとめ、カンタータの中でも物語性が強いオラトリオ形式をもって、受難がより高揚して受け止められるように配慮しているのである。
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